LED灯体とタングステン灯体の違いってなに?〜 項目別に見る、LEDとタングステンの比較 〜

LED灯体とタングステン灯体の違いってなに?〜 項目別に見る、LEDとタングステンの比較 〜

突然ですが、ここをご覧の皆さまはLEDがなんの略だか、わかりますか?

正解は「Light Emitting Diode」です。
青色発光ダイオードの発明で赤﨑勇終身教授、天野浩教授、中村修二教授の御三方がノーベル賞を受賞したのが、ちょうど10年前の2014年。
それからの10年でLEDはめまぐるしく進化してきました。

照明の世界でもすっかりお馴染みの存在となった「LED灯体」。「タングステン灯体」との違いを今日はみていきたいと思います。

1-1/色を自由に変えられる?

タングステンの場合

タングステンの場合、光源は白のみで色を表現するにはカラーフィルターが必要で基本的に1灯1色でした。
回路が少ない会場の場合は、必要な色の数に灯体の数が足りず、本番中にお客様から見えない場所のフィルターを差し替えたり、回路そのものを差し替えるなどの工夫をしてきました。

カラーフィルター/#21、#87(ポリカラー)

タングステン/N/C

タングステン/#21

タングステン/#87

LEDの場合

一方LEDの場合は、基本的に1灯3〜5色(マルチカラー)のLED素子が内蔵されていて、光源そのものに色がついています。
どのLED素子を組み合わせて光らせるかによって様々な色を出すことができるので、フィルターや回路を差し替える必要がなくなりました。

マルチカラーの一例

  • 3色/RGB(レッド、グリーン、ブルー)
  • 4色/RGBW(レッド、グリーン、ブルー、ホワイト)
  • 5色/RGBWA(レッド、グリーン、ブルー、ホワイト、アンバー)

マルチカラー/R(レッド)

マルチカラー/G(グリーン)

マルチカラー/B(ブルー)

マルチカラー/W(ホワイト)

マルチカラー/A(アンバー)

他にWW(ウォームホワイト)やCW(クールホワイト)、VW(バリアブルホワイト)など白色の表現を追求したモデルや、色表現を突き詰めた多色マルチカラー、さらに異なるLEDエンジンを組み合わせて独自の表現を追求したモデルもあり、各メーカーが熱心に開発しています。
ちなみに後の項でも説明がありますが、WWやVWはタングステン灯体の色温度に近づけた灯体で、中にはカラーフィルターを使っても違和感が少なくなっているモデルもあります。

その他のマルチカラーの例

  • ホワイト系
    • WW(ウォームホワイト)
    • CW(クールホワイト)
    • VW(バリアブルホワイト)
  • UV(ユーブイ/ブラックライト)
  • 多色マルチカラー/DRRALGCBI
    • DR/ディープレッド
    • R/レッド
    • A/アンバー
    • L/ライム
    • G/グリーン
    • C/シアン
    • B/ブルー
    • I/インディゴ
  • 組み合わせマルチカラー
    • RGBAW + UV
    • RGBA + WW

多色マルチカラーは、まるで暗号のようですね!

ところで、どの組み合わせが自分に合っているか?、どのような色が出るのか?、使ってみないと分からないですよね?
そういう時には裏方屋デモ機材貸し出しページをチェックしてみてください。もしかしたら気になっている機材があるかも????

デモ機のページに行く

  • タングステン:カラーフィルターを使って色を変える
  • LED:光源そのものの色を自由に変えられる

1-2/「高温にならない」とか「エコだ」とかって、どういうこと?

タングステンの場合

タングステンの場合、点灯時間が長くなると筐体が高温になり大変危険です。そのため演者さんが火傷をしたり、何かに引火する危険性があり、制限があるなかで仕込み位置を決めていました。

ここで、なぜタングステンが熱くなるの?と疑問に思っている方に、簡単に説明しましょう。

タングステンはフィラメントに電気を流すことで抵抗が起こり発光します。
この時フィラメントで光になれなかったエネルギーが熱に変わります。その熱はなんと数千度にもなるので、結果的に灯体自体も熱くなってしまうのです。
「発熱が多い=光になれなかったエネルギーが多い=エネルギーの変換効率が悪い」ということになるので、タングステンはエネルギーを光に変換する効率が非常に悪いということになります。

そしてこの現象は結果的にフィラメントに負担をかけ、その寿命を縮めることになってしまうのです。タングステン球の定格寿命がLEDに比べて遥かに短いのは、この為です。

LEDの場合

LEDの場合、電気エネルギーを光に変えるための効率が大変良く、光源自体の発熱量は非常に少ないためタングステンほど高熱になりません。
とはいえ発熱しないわけではないのですが、LED素子と基盤は高熱に弱い(とはいえ数十度です)ので熱へのマネジメントはしっかりしており、LED素子が発した熱はヒートシンクや冷却ファンにより冷やされ、発火や発煙の危険が大幅に減りました。
そして効率が良いということは消費電力が少なくても明るいということですので、使用電力量の限られた現場では少ない電力でも多数の灯体が扱えるため大変重宝し、かつ節電にもつながり「エコ」なのです。

そして、この変換効率の良さはLED素子への負担を軽くするため寿命が長くなり、結果的にお財布に優しいということになります。
その辺りの比較は後の項で詳しく説明しますので、最後までご覧ください。

余談ですが、これまで熱を気にして仕込めなかった場所にも仕込むことが可能になったことで様々な製品が生み出されました。裏方屋でも取り扱っている電飾カテゴリに、衣装や舞台美術に仕込めるテープライトという製品もあります。ぜひ見てみてくださいね!

電飾カテゴリーに行く

  • タングステン:高熱になり、電気をいっぱい使う
  • LED:高熱にならない安心設計、省電力

1-3/タングステンの灯体と一緒に使って、見た目に違和感ない?

確かにLEDになったことにより、過去の形状に囚われないユニークなデザインのものが多くなりました。でも実はPAR、フレネル、凸、カッタースポットなど主要の機材には、タングステン灯体と見た目がほぼ変わらないものがあります。今ある劇場機材と一緒に使っても違和感が少なく、既存のオプション(バンドア、フィルター枠、GOBOホルダーなど)がそのまま使えるので、演出の幅も広がりますね。

LED タングステン
PAR
Vari-Lite VL800 EventPar
商品ページをみる
丸茂 SPH3-1000-AL
フレネル
ETC ETC ColorSource Fresnel V
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丸茂 FQHシリーズ
Panasonic 天井吊下型LEDスポットライト 平凸
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丸茂 MSシリーズ
カッタースポット
ETC Source Four LED Series 3 Lustr X8
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ETC Source Four
  • タングステンとLED、見た目がよく似た物もある

1-4/LEDの光が汚いって聞いたことがあるけど、それってどういうこと?

「タングステンはアナログで無段階だから、フェードインフェードアウトが綺麗」
とか、
「LEDってデジタルだから光が汚い」
とかって言われているのを聞いたりするけど、実際はどうなの?って思っている方もいらっしゃるでしょう。

確かにLED固定型の黎明期は、フェードインフェードアウトが唐突だったり、照射面の色再現性が著しく悪かったりと、タングステン灯体の生み出す光の美しさに到底及ばない性能でした。
タングステン灯体は長年試行錯誤されて培われた実績と、簡素かつ堅牢な筐体によるメンテナンス性の高さ、フワッと点いてスーッと消える美しいフェード、色再現性の高さと色表現の美しさなど、全てにおいて圧倒的なアドバンテージがありました。

さらに悪いことに、新しい機材に対する会場の設備も追いつきませんでした。
LEDの登場当初は、必須であるDMX信号線を常設しているところは多くありませんでした。
そのため、大多数の会場ではその都度敷設し、純直回路が少ない場合は仮設電源の施工も必要であったりと、タングステンに比べて仕込み段階のハードルが高かったのです。

こうして、未知の機材であったLEDフィクスチャーは一部の現場で敬遠されてしまいました。

しかしそんな逆境にも負けず、各メーカーはLEDの弱点を克服するために研究開発を続けていきました。

ディマーカーブ(調光曲線)の調整機能を備えたもの、多彩な色表現を追求したもの、色再現性を重視しタングステン灯体の再現性に近づけたもの、DMXフィクスチャーならではの電動ズームを搭載し狭角から広角まで網羅したもの、既存の調光器に接続して調光できるものなど、DMXフィクスチャーである利点を追求し、LEDが得意な分野をグングン伸ばし、かつタングステン灯体では真似できない機能を盛り込み、様々なタイプの灯体が開発され進化していった結果、ついにその地位は揺るがないものとなりました。(ちなみにこれは調光卓の進化にも大きな影響を与えていますが、それはまた別の機会に。)

そしてこの進化は会場側の進化をもたらしました。グリッドやサスペンション、ブリッジ、バルコニー、フロアなど、調光回路がある場所に直回路やDMX回線を整備(増設)したことで、持ち込み機材の制限がなくなりました。また多くの会場が常設機材としてLEDフィクスチャーを採用していったことで使用者側のハードルが下がり、普及するきっかけにもなりました。

こうして徐々に市民権を得たLED固定型は、ムービングライトと共に今では欠かせない機材としてあらゆる現場で目にするようになったのです。

ですが、価格帯によっては色再現性が低い製品があったり、壊れやすいものもあったり、直視すると目が痛かったりなどなど、まだまだ乗り越えなくてはいけない課題が残っているので、これからの進化に期待ですね!

  • やはり主流はタングステン。だけどLEDだって負けてないぞ!

1-5/LEDのコストってどうなの?

ここまで色々比較してきましたが、やはり皆さんが気になってるのはコレでしょう。

「LEDって球切れしないからコストが安いって聞くけど、実際どうなの?」

確かに気になりますよね!じゃあ本当のところはどうなのか?電気代は無視することにして、単純にLEDエンジンの定格寿命までにかかるランニングコストを比較してみましょう。

まずは最も出番が多いPARライトの場合。

LEDは
  • 中級機と高級機の平均価格
タングステンランプは
  • PAR64のミディアムで、USHIOのロングライフ球商品ページ
を使用すると仮定します。

LED(中級機) LED(高級機) タングステン(PAR64/M)
本体価格(平均) 120,000円 280,000円 9,000円
ランプ/単価 - - JDR100V500WG/M/S6/E / 17,810円
定格寿命 50,000時間 50,000時間 2,000時間(ロングライフ球)
電球交換回数 / 金額 - - 25回 / 445,250円
総額(おおよそ) 120,000円 280,000円 454,250円
※価格は2024年7月現在のものです。実際の価格はお問い合わせください。

いかがでしょう?
こうやって比較してみると、LEDってかなり安いと思いませんか?本体とランプのみの単純な比較ですが、とてもわかりやすい差がついたのではないでしょうか。
もちろん初期コストだけを見ると比べるまでもなく高いのですが、圧倒的な定格寿命により最終的にLEDの方が安く抑えられるようです。

さてつづいては演出照明の代表機材といっても過言ではない、カッタースポットの場合を見ていきましょう。

比較するのはETC Source Fourシリーズ。これは世界中で広く普及しており、皆さんも目にする機会が多いのではないでしょうか?Source FourシリーズはタングステンとLEDの両方でレンズやオプションを流用できる優れものです。

LEDは
共に最新バージョンになります。

タングステンランプは
を使用すると仮定します。

それぞれレンズなし(シャッターバレル付き)の本体価格のみで比較します。


ColorSource Spot V
Multiverse 付き
Source Four LED
Series 3 Lustr X8
Source Four
(タングステン)
本体価格(平均) 369,990円 539,990円 74,990円
ランプ/単価 - - HPL100V750WB / 14,840円
定格寿命 54,000時間 54,000時間 1000時間(ロングライフ球)
電球交換回数 / 金額 - - 54回 / 801,360円
総額(おおよそ) 369,990円 539,990円 876,350円
※価格は2024年7月現在のものです。実際の価格はお問い合わせください。

ここでも明確な差がついてしまいました。

PARと同じように初期コストが大きいですが、ランニングで一気に追い抜いていきました。
上記はあくまでも一例ですが、LED灯体は総合的に見てコストパフォーマンスに優れることがわかりましたね。もちろん灯体選びは照度や色調も含めて考えなければならず、一概にコストだけで判断できない部分があると思います。とはいえ、ここまで大きな差がつくとなると無視できない部分でもあります。

さて、あなたはどちらを購入しますか?

  • LEDで省エネ&コストダウン!SDGs!

まとめ

LED固定型がどういったものなのか、なんとなくお分かりいただけたでしょうか?意外と身近な機材だということを知っていただけたら幸いです。

メーカー各社の努力(と根性)でデジタル機器特有の個性を伸ばしながら、これまでのタングステン灯体の特徴をも取り込み、LEDフィクスチャーという光源として立派に成長してきました。

まだまだ発展途上にあるLED固定型を、裏方屋は全力で応援していきます!
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