機材を買うなら30万円未満?! ~「少額減価償却資産の特例」を知ろう~

機材を買うなら30万円未満?! ~「少額減価償却資産の特例」を知ろう~

皆さんは「少額減価償却資産の特例」をご存知でしょうか?
今回は、裏方屋がお世話になっている税理士さんの監修の下、具体例と共にざっくりとわかりやすくご紹介したいと思います!

そもそも減価償却ってなに??

会社が購入した物のうち「自社で長く使っていく物」は、基本的に「資産」になります。
資産と聞いて最初に浮かぶのは車や土地などの高額な物ですが、仕事に使うムービングライトや調光卓も資産です。

資産は購入したタイミングで全額を損金として計上することができません
年々少しづつ償却していき、償却した分をその年の損金として計上していくことになります。それが「減価償却」という考え方です。

減価償却のやり方は

  • 10万円未満
  • 20万円未満
  • 30万円未満
と金額によって選択肢が異なります。

具体的にみていきましょう!

※以下の例は、全て税抜き会計処理を行っている事を前提としています。
※商品価格は全て2023年12月時点の参考価格です。

事例1■ShowBaby1台を自社で使うために買った場合

Showbaby
ShowBaby1台の価格 79,990円(税別)

10万円未満の商品は「少額減価償却資産」として、すぐに経費(損金)として処理することができます。
何年もかけて減価償却する必要はありません。

1年目 2年目 3年目 4年目 合計
少額減価償却資産 79,990円 79,990円

事例2■ShowBaby3台を自社で使うために買った場合

Showbaby3台セット
ShowBaby3台セットの価格 209,990円(税別)

10万円を超えています。
こういう場合はどう考えれば良いでしょうか。

機械や装置、工具、器具について、1台または1個ごと、あるいは1そろいごとに、取得価格が30万円未満かどうかを判断します。

ShowBaby3台セットでの値段は209,990円ですが、1台あたりで考えるので

209,990円 ÷ 3台 = 69,996円

1台あたりの値段は、約70,000円です。 10万円未満の資産なので「少額減価償却産」となります。

1年目 2年目 3年目 4年目 合計
少額減価償却資産 69,996円 69,996円

合計すると209,990円ですが、こちらも少額減価償却資産として、すぐに損金にすることができます。

【まとめ】1台あたり10万円未満なら「少額減価償却資産」として、すぐに損金にできる

事例3■AvolitesのT2を、自社で使う目的で1台買った場合

Avolites T2
Avolites T2 の価格 169,990円(税別)

T2は10万円を超えています。少額減価償却資産の条件は10万円未満なので、減価償却の出番です。
今回は耐用年数を4年と仮定します。

どのように減価償却をするかは、自分で選択できます

1)通常の減価償却

通常の減価償却だと、4年かけてジワジワと損金(経費)として償却していきます。
購入した年に出ていく現金は169,990円ですが、それを経費として損金算入し終わるのは4年目ということになります。

2)一括償却資産

20万円未満の資産は、3分割して償却することもできます。
「一括償却資産」という考え方です。
購入した年に出ていく現金は169,990円ですが、それを経費として損金算入し終わるのは3年目です。

3)少額減価償却資産の特例

「少額減価償却資産の特例」を使うと、購入した年に出ていく現金は169,990円で、それを同年に経費として損金算入できます。

30万円未満の機材なら、購入した年度に全額経費として計上して損金にすることができるのが「少額減価償却資産の特例」です
上に「10万円を超えているので少額減価償却資産の条件を満たしていない」と書いたのですが、30万円未満であれば特例を適用することができます。※適用にはいくつか条件があります。

<何年で損金への算入が完了するか>
1年目 2年目 3年目 4年目 合計
通常の減価償却(定額法) 42,498円 42,498円 42,498円 42,498円 169,990円
通常の減価償却(定率法) 84,990円 42,500円 21,250円 21,250円 169,990円
一括償却資産での償却 56,664円 56,663円 56,663円 169,990円
少額減価償却資産の特例 169,990円 169,990円
※全て税抜き処理で計上しているものとし、耐用年数を4年と仮定しています。
【まとめ】1台あたり30万円未満の機材を買った時に、その年度のうちに経費にして損金算入したい場合は「少額減価償却資産の特例」を使えば即時損金にできる!

事例4■HIGHLITE Showtec Phantom 180 Wash Blackを10台買った場合

HIGHLITE Showtec Phantom 180 Wash Black
HIGHLITE Showtec Phantom 180 Wash Blackの価格 250,000円(税別)

こちらの機材も、1台あたりのお値段が10万円以上30万円未満なので減価償却のやり方は自分で選ぶことが出来ます。
20万円を超えているので、一括償却資産は選べません。

250,000円の機材 × 10台 = 2,500,000円

の損金算入なので、経営へのインパクトは大です。

1)通常の減価償却

通常の減価償却だと、4年かけてジワジワと損金(経費)として償却していきます。
購入した年に出ていく現金は250万円ですが、それを経費として損金算入し終わるのは4年目ということになります。

2)少額減価償却資産の特例

「少額減価償却資産の特例」を使うと、購入した年に出ていく現金250万円を同年に経費として損金算入できます。

<何年で損金への算入が完了するか>
1年目 2年目 3年目 4年目 合計
通常の減価償却(定額法) 625,000円 625,000円 625,000円 625,000円 2,500,000円
通常の減価償却(定率法) 1,250,000円 625,000円 312,500円 312,500円 2,500,000円
少額減価償却資産の特例 2,500,000円 2,500,000円
※全て税抜き処理で計上しているものとし、耐用年数を4年と仮定しています。

「少額減価償却資産の特例」とは...

【まとめ】1台あたり10万円未満なら「少額減価償却資産」として、すぐに損金にできる
【まとめ】1台あたり30万円未満の機材を買った時に、その年度のうちに経費にして損金算入したい場合は「少額減価償却資産の特例」を使えば即時損金にできる!

本来10万円未満にのみ適用される「すぐに損金にしていい」というルールを、中小企業だけ「特例」として30万円未満まで適用していいですよ、という事なのです。

少額減価償却資産の特例の何が嬉しいのか

すでに購入した物に対して「資産をすぐに損金にして計上したい場合」にとても有利な制度です。

つまり、

  • 会社が儲かっていて売上がいっぱいあがっているので少しでも経費を増やして利益を減らしたい
  • 実際に使ったお金を同じ年度のうちに経費として計上したい
という場合に使える制度です。

通常の減価償却のほうが良い場合

逆に「損金として計上するのを出来る限り遅くしたい場合」には通常の減価償却をしたほうが有利になります。

会社が儲かっていなくて、少しでも損金算入を先延ばしにして今の利益を増やしたい場合には減価償却を選びましょう。

【参考】少額減価償却資産の種類

少額減価償却資産には、全部で4つのパターンがあります。

全ての減価償却資産=「減価償却資産」
取得価額が10万円未満の償却資産=「少額減価償却資産」
取得価額全額を取得年度に一括で損金算入できます
取得価額が20万円未満の償却資産=「一括償却資産」
3年間で均等に償却する、特例を利用して一括で償却する、のいずれかを選択することができます
取得価額が30万円未満の償却資産=「少額減価償却資産の特例」
取得価額全額を取得年度に一括で損金算入できます※条件があります
少額減価償却資産の制度比較表

通常の減価償却 少額減価償却資産 一括償却資産 少額減価償却資産の特例
対象事業者 すべての事業者 すべての事業者 すべての事業者 青色申告法人である中小企業者等
対象資産 すべて
の減価償却資産
10万円未満
の減価償却資産
20万円未満
の減価償却資産
10万円以上30万円未満
の減価償却資産
償却方法 普通償却
(定額法または定率法)
即時償却 3年均等償却 即時償却
償却資産税 課税あり 課税なし 課税なし 課税あり
※全て税抜き処理で計上しているものとし、耐用年数を4年と仮定しています。

「少額減価償却資産の特例」の条件

いつでも誰でも無条件に受けられるわけではありません。いくつかの条件があります。概要をご紹介します。

1つ30万円未満

取得価格が30万円未満の減価償却資産です。
機械や装置、工具、器具について、1台または1個ごと、あるいは1そろいごとに、取得価格が30万円未満かどうかを判断します。

中小企業であること

  • 資本金の額、または出資金の額が一億円以下の法人
  • 常時使用する従業員の数が1000人以下の法人
の両方を満たしている必要があります。

青色申告をしていることが条件となります(白色申告の方は適用されません)。

中小企業の定義に関しての詳細はこちらの国税庁のガイドラインをご参照ください。
No.5432 措置法上の中小法人及び中小企業者

年間の合計金額

損金として算入できる少額減価償却資産は、年間で合計300万円までです。

消費税は含む?含まない?

税込みで会計処理をしている課税事業者は税込みで、税抜きで処理している事業者は税抜きで判定します。消費税が免税されている事業者の場合には、税込みで30万円未満かどうかを判断することになっています。
少額償却資産の特例に関する正式な情報は、下記の国税庁のページをご参照ください。
No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

どうやって申告するの?

確定申告をする際に申告することが必要です。

法人の場合は

  • 購入した資産の全額を「消耗品費」などの科目で費用として計上しておく
  • 確定申告書を提出する時に「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書(別表16[7])」を添付して申告する

個人事業主の場合は

  • 決算書の該当ページに記載した上で、明細を添付する

必要があります。

申告に関しては、税理士さんに相談しましょう!

今回のまとめ

30万円未満の機材を買えば「少額減価償却資産の特例」を使って、即時全額経費に計上できる!

今回ご紹介した「少額減価償却資産の特例」は、機材だけではなく仕事で使うパソコンを購入する際などにも活用できるかと思います。

  • 1つ30万円未満
  • 年間合計300万円まで
の2つのポイントを抑えて、自社にあったタイミングで償却していきましょう!