日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 田中太平先生のお話

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 田中太平先生のお話

田中太平

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 新生児科 部長

去る10月某日、とあるご縁があって、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院の新生児科にお邪魔してきました。

田中太平先生とのご縁

年の瀬も押し迫る2020年12月27日、とあるメールが飛び込んできました。読めば

「NICUで使用しているライトが故障してしまい、修理も難しく困っている」

とあります。

事情をお伺いしてみると……。

NICUでは300g台の超低出生体重児から4000gを超える巨大児まで、様々な疾患を持つ赤ちゃん達の写真を日々撮影し続けています。

その数累計7万枚以上。

赤ちゃんの所見は日々変わるため、こまめに写真を撮影し電子カルテに記録として残す必要があるのです。また、疾患別に分類して病態解明に役立てるためにも「正しく照らす」ことが必要でした。

田中先生は、この写真をもとに本も出版していらっしゃいます。


『新生児の正常・異常みきわめブック 正期産児編: 豊富な写真で正常所見と疾患がわかる』

https://www.amazon.co.jp/dp/4840468818/ref=cm_sw_r_tw_dp_SDDEGRD1BV3WA0NWJEVK?_encoding=UTF8&psc=1

保育器の上に乗せることができて、持ち運びが簡便で、色温度もきちんと調整できる機材、として、田中先生が愛用されていたのが「ARRI LoCaster 2 Plus」でした。

が、その機材が壊れてしまった、というSOS。

年末でどこの会社もすぐには身動きが取れず、海外からの部品の手配もままならない。でも、年末だろうが年始だろうが盆暮れ正月関係なく、NICUには常に様々な困難を抱えた赤ちゃんがいます。

「なんとかしよう」

ということになりました。

壊れてしまった機材を、大阪在住の修理メンテナンス担当が受け取り、修理、部品交換、連続点灯チェック。

ちょうど手元に部品があったことが幸いし、12月30日にはお手元にお戻しすることが出来ました。

田中先生のフェイスブックにもその時の話が紹介されています。是非ご覧ください。

今回は、そんなご縁のあった田中太平先生の病院にお邪魔してきました。

田中太平先生のNICU

田中先生のいらっしゃる日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院の新生児科のNICUは、田中先生が照明にこだわり抜いて作られたNICUです。

  • 患者である赤ちゃん
  • 赤ちゃんに寄り添うご家族
  • そこで働くスタッフ

全員にストレスがないように、穏やかで解放感のある空間作りを”照明を使って”実現してらっしゃいます。

天井高に制限のある、既存の病院の建物内で、少しでも解放感があるように意図的に作られた段差と曲線

誰の目にも直接照明があたることのないように敷設された間接照明

色温度も温かみのあるアンバーに統一して調整されています。

赤ちゃんの状態によって適切な明度に変えられるようになっていたり、柔らかな明かりになるようなシェードがつけられていたり、ありとあらゆる照明による工夫がなされていました。

写真では上手に伝えることができていないのですが、とても心地の良い暖かい薄暗さです。

空を見ることなく旅立つ赤ちゃんのためのお部屋には、いつでも青空をみることのできる人工空が。

楽しさの工夫

「子ども達、ご家族、働くスタッフ みんなに幸あれ」という田中先生の思いで作られたNICUはそれだけではありません。

季節のイベントの演出があったり

夕暮れ時に差し込む外明かりを生かす多重構造のステンドグラス

NICUに入れない、まだ幼いご兄姉などが赤ちゃんの様子を見るためのお部屋。

廊下には、卒業生たちからの様々な作品が展示してあるギャラリーコーナー

様々なご縁のゲストをお招きしてのコンサート開催など

楽しく過ごすための工夫に満ち溢れていました。

最後に

田中先生のNICUはテレビなどのメディアでも紹介されています。

このNICUのために田中先生は照明のことを深く勉強されていました。

田中先生の強い意志とユーモア溢れるお人柄によって作り上げられたNICU。

日々エンタメ業界との繋がりが強い私たちですが、照明による演出はエンタメだけのものではないのだ、と強く感じる一日でした。

このご縁を大切にしたい、私たちも何か出来たら、そんな思いで、10月末に再び日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院にお邪魔する予定です。

何をするのかはお楽しみに!