City Theatrical社による無線照明制御システムは、DMXで制御される全ての照明機器に対し、小型で低価格なマルチバースモジュールにより、数百もの灯体、数十に及ぶユニバースの無線制御を可能にし、照明制御を劇的に手軽なものにします。
マルチバース無線システムによるDMX/RDM通信技術は、3年に及ぶリサーチ、工学技術研究や開発による賜物であり、この革新的な技術の利用は大規模な複数のユニバースを扱うマルチバース無線照明制御技術を、より手軽に、そして高い信頼性の元での使用を実現しました。
ここではその根底となる無線技術の仕組みをご紹介し、マルチバースに内蔵された飛躍的に進歩した多くの技術パフォーマンスを存分に使用して頂き、ユーザーの皆様が手軽に照明制御技術を使用できるよう、その詳細をご紹介いたします。
2000年の初頭、無線DMXシステムは、それまで高額で多くの本数が必要だった照明制御用の信号ケーブルを減らす役割を目的として発展してきました。一方、その発展に伴い、今まで設置が難しかった可動式の舞台美術への仕込みや、配線の困難な場所にも対応できるようになり、照明デザイナーの可能性を広げる役割も果たしてきました。そのため現在では、川や高速道路を挟んだ仕込み、高いビルの屋上の仕込みなど、あらゆる場所へ照明効果をデザインすることが可能です。
無線DMXの使用により様々な場所で発展を遂げ、今やビデオ撮影や映画撮影現場でも使用されておりますが、その発展に制限をかける要因も明確になってきました。
以下はその要因をいくつかリストにしたものです。
・多くの送信エネルギーを使用する効率性の悪い無線送信システム
・大変混雑した無線周波数スペクトル
・DMX512の標準規格構造から起こる制限
・コスト面
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4-1.多くの送信エネルギーを使用する効率性の悪い無線送信システム
これまでのDMX無線製品では1ユニバース(512チャンネルスロット)を無線送信するのに、大変大きな送信エネルギーを使用しておりました。しかし現代の照明機器おいて512チャンネルのスロット数では、すぐにいっぱいになってしまいます。そのため照明機器ユーザーの多くは、複数のユニバースの使用を必要とし、大型の無線システムの設置を必要とします。この需要に比例して、大量の無線送信エネルギーを必要とするがゆえに、劇場の規定や放送用規約とも衝突するようになり、信頼性を持って無線システムを使用するのが難しい場面が多発してきました。これが無線DMX技術の発展の大きな足かせとなってきたのです。ユーザー側の意欲に関係することなく、複数のユニバースを扱う無線DMXシステムの拡大は、大変難しいものになっておりました。
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4-2.大変混雑した無線周波数スペクトル
電磁的な周波数スペクトルは、日常生活にも溢れており、各国の政府によりその規則が厳しく決められております。無線用の周波数スペクトルである30ヘルツ〜300ヘルツの範囲も、規定の中に含まれております。その他の周波数スペクトルは、異なる無線技術へと割り当てられ、ユーザーとの干渉を防いでおります。
Wi-Fiやその他の無線技術を含め、無線DMXは2.4GHz規格の製品として、その小規模な周波数スペクトル範囲内に収められているだけではなく、そこには科学技術部門や、医療機器(ISM)用のバンド帯も存在します。無線技術の人気は世界中に幅広く浸透し、今や大変混み合ったものになってきております。
無線DMX製品を製造するメーカーは、その混雑した周波数帯に特化した技術開発を進めてきましたが、そこには限界があり、大型のシステム構築の妨げとなってきました。
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4-3.DMX512の標準規格構造から起こる過剰な無線送信エネルギーの削減
DMX512の規格上、照明卓からそれぞれの灯体まで1秒間に44回も司令信号を送信しなくてはいけません。この余剰を含む送信回数により、送信にエラーが起こった際も、制御機器から目的の灯体まで届くよう設計されております。この基本的な構造は、有線による接続では問題にはなりませんが、無線送信においては、不必要な送信エネルギーを大量に必要とする大きな「欠点」となってしまいました。
混雑した周波数環境に加え、信号の信頼性と引き換えに必要とされる過剰な送信エネルギーの問題は、無線DMXシステムにおいて、大きな障害となってしまったのです。
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4-4.コスト面
プロフェッショナルな現場に向けた無線DMX送受信機(その一台で送信機、受信機の両方の機能を持った無線機器)の多くは数十万円と高額であり、かつ複数の台数を必要とします。
その後発売されてきたドングルを必要とするシステムや、「回路ボードに組み込まれた無線モジュール」によるシステムは、ある程度のコストは抑えられますが、それでもなお高額です。 大型の無線システムが”技術面”で実現可能だとしても、以前市場価格においては大変高額になり、その実現を阻んできました。
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潜在的な可能性を持ちながら、その足かせによりユーザーが必要としているシステムを提供できない無線DMXシステムの構造により、City Theatrical社は未来の照明システムにも適合するよう、スケールアップが可能なシステムデザイン設計を開始しました。すべての無線システムが持つその欠点を克服するため、以下の項目を含む多くの飛躍した技術が考案されました:
- 従来の無線よりも5倍多くの信号が送信でき、かつ1ユニバースに対する従来の出力パワーに対し、80%送信パワーが削減された新しい無線技術
- 2.4GHz帯、900MHz帯のどちらか、もしくは両方同時に送信可能な能力
- mDMX(マルチバースDMX):規格を無線送信用に要約し、劇的に送信エネルギーを削減させる技術
- mRDM(マルチバースRDM):RDM(ANSI E1.20-2010)の標準規格を無線送信用に要約し、向上した無線によるRDM通信技術
- 信号を喪失した際、エラーを検知し表示する機能
- その他のマルチバースシステムから不用意なアクセスを防ぐSHoW Key機能
- スマートフォンやタブレットからの照明制御に対応可能なシステムを、マルチバース送信機へ内蔵
- ロックPIN: 第三者からのアクセスを防ぐロック機能
- 初代のCity Theatrical社のワイヤレスモデル、SHoW DMX Neo 無線DMX機器の機能への対処(Neoモードにて引き続き使用可能)
- RDM機能の統合:マルチバースモジュールを灯体に組み込むことで、無線機能と灯体を一つの機器として統合することを可能にする技術
- リーズナブルな製品価格
それぞれの躍進した機能を、以下詳しくご覧ください。
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5-1.従来の無線よりも5倍多くの信号が送信でき、かつ1ユニバースに対する従来の出力パワーに対し、80%も送信パワーが削減された新しい無線技術
マルチバース無線システムの送信能力は、大容量のデータを少ない送信エネルギーで送ることができるため、大規模なシステム構築へ向けた最初のステップとなる技術です。
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5-2.2.4GHz帯、900MHz帯のどちらか、もしくは両方同時に送信可能な能力
ほとんどの無線DMXシステムが2.4GHz帯での使用となっておりますが、マルチバースシステムは900MHz帯にも対応し、北米での使用ライセンスもすでに取得しております。ユーザーはどちらかの周波数を選択するか、もしくは同時に両方使用することもでき(使用するマルチバース製品によります)、ユーザーが必要とするシステムに対し、最適化を図ることが可能です。
2.4GHz帯は多くのデータを送信できるがゆえに、常に多くの無線機器に使用される周波数帯となっております。しかし900MHz帯も有効な周波数帯の1つです。
以下、2つの周波数帯を比較してみました。
2.4GHz
長所 |
短所 |
ほぼすべての国で使用可能 |
周波数帯の混雑 |
壁などの対象物を通り抜けることが可能 |
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広範囲な放送可能距離 |
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マルチバースでは5ユニバース分のデータ送信が可能 |
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900MHz
長所 |
短所 |
混雑のない周波数帯 |
北米のみ使用可能 |
2.4GHzよりも、壁などの対象物を通り抜ける能力が高い |
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2.4GHzよりも広範囲な放送可能距離 |
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マルチバースでは4ユニバース分のデータ送信が可能 |
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北米における幾つかの遊園地では、ATMなどが2.4GHzを使用しており、その混線を避ける為に、2.4GHzの使用が禁止されております。その為それらの規定条件をクリアするためには、900MHzは最良の選択と言えます。
その他のユーザーとして、広いエリアにかけてトランシーバーなどの送信周波数帯から分ける必要がある際などにも使用されております。北米以外の地域では、2.4GHzの使用が義務付けられております。
(訳注:2020年時点では、日本国内での900MHzでの使用は禁じられています)
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5-3.mDMX(マルチバースDMX)
DMXの標準規格を無線送信用に要約し、劇的に送信エネルギーを削減させる技術。
mDMXは、マルチバースシステムの実現に向け、従来に比べて80%もの無線送信エネルギー削減を基準とした、マルチバース無線システムの根幹を担う技術です。DMX512の規格上、DMXスロットの動静にかかわらず、1秒間に44回も司令信号を送信するという余剰を含む送信回数がネックとなってきました。
以下は、一人の登壇者がステージに上がり1時間のスピーチをするとし、その人物へ、数台の灯体をフォーカスした時、5秒間のフェードタイムで点灯し、1時間そのままフルゲージで点灯させ、その後同じく5秒間のフェードタイムで消した際の計算式です。
以下計算式:
60秒x 60分 = 3600秒x 44 DMXパッケージ(毎秒)
=158,400 DMXパッケージ(毎時)
この1時間において、使用する灯体は計10秒間ゲージが変化し、(5秒間のフェードイン、5秒間のフェードアウト)、残りの時間はすべてフルゲージです。
この10秒間は計算された1時間の中から除外したとします。その割合は全体の0.28%ですから、残りの99.82%はフルゲージでの出力であり、司令信号を受け取り続けます。
有線システムであれば周波数帯のことは考慮する必要がないので全く問題ありません。しかし無線システムの場合は、この不要な司令信号を周波数帯に送り続ける構造が大きなハンディーキャップとなってきたのです。また実際にもその他の無線システムへの干渉の原因にもなってきました。
City Theatrical社では、多くの複雑なシーンを組むミュージカル公演のキューの動きを調査し、その結果どんなキューでも、ほとんどのDMXスロットが静止し、ムービングライトにおいても、たくさんのDMXスロットが静止状態であり、公演全体を通して動いていないことを発見しました。
送信機と受信機とのリンクが完全にマルチバースシステムによるものである場合(その他の灯体、照明機器の機能が影響を受けない条件下)、必ずしも強制的にDMX512 ANSIの規格に沿う必要が無いことを認識し、無線システム用にデータを要約し効率化する規格を開発することを進めてきましたが、その集大成がmDMXとなったのです。この技術は、すべての無線DMXシステムに対して大きな飛躍となるテクノロジーなのです。
mDMXはその無線エネルギーを大変賢く抑えた形で、必要なすべての信号を送信し、定期的なリフレッシュを繰り返しながら、稼働するスロットすべてを送信できる能力を常時保ち続けます。この技術により、照明システムが持つ本来の技術を削減することなく、日増しに大きくなるシステム規模への対処と、無線技術に対する規則への準規の、両方を可能にするのです。
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5-4.mRDM(マルチバースRDM)
RDM(ANSI E1.20-2010)の標準規格を無線送信用に要約し、向上した無線によるRDM通信技術。
DMXは照明制御卓から灯体へ、一方向に信号が流れるプロトコルです。一方、RDM
(リモード・デバイス・マネージメント)は、DMX機能に付随する、両方向へ信号が流れるプロトコルとなっております。そのため、ユーザーはRDMを利用してDMXアドレスの変更や、灯体のパーソナリテイの変更などを、ラダーでトラスに登ることなく、遠隔で設定変更を行うことが可能になりました。しかし、RDM ANSI規格は有線でRDMを使用し、信号ケーブルをシェアするためには、DMXの流れを少しの間止める必要がありました。このDMX信号へのデメリットが、多くのユーザーがRDMの使用をためらう原因となり、RDMそのものが持つ潜在的な技術能力を活かしきれない原因にもなってきました。
マルチバースによるmRDMは、DMX信号と混線することなくRDM信号を送り返すことが可能であり、DMX信号と干渉することは一切ありません。この独特な機能がmRDMの価値を大きく高めるのです。より向上したRDM技術は、設定変更やトラブルシュートの概念においても、新しい技術領域を開拓することになります。City Theatrical社は無線RDM技術においてのイノベーターであり、米国の技術特許を取得しております。
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5-5.信号を喪失した際、エラーを検知し表示する機能
特に混み合った周波数環境など、送信された信号に異常が発生することがあります。送信信号のエラー状況を集約し、検知・表示する機能は、重要な信号の無線送信を必要とする際の、信頼性維持に対する大きな手助けに繋がります。
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5-6.その他のマルチバースシステムからのアクセスを防ぐSHoW Key機能
マルチバース無線DMXシステムではSHoW ID(周波数、信号レート、送信バンド帯、ホッピングパターンなど、送信されるパラメーターを決める、数字の組み合わせによる独自のIDシステム)を採用しております。これにより使用環境に合わせて無線設定の最適化を測ることができるのです。そのためには同一のシステム内で使用する機器(送信機とすべての受信機)はこのSHoW IDが一致していなくてはいけません。
もし、2つのマルチバース無線システムが近くに存在し、同一のSHoW IDを使用している場合(隣接したスタジオや近隣の劇場など)、不用意に他のシステムへアクセスしてしまう場合があります。これを防ぐために3つの数字からなるSHoW Keyを設定することで、外部からの不用意なアクセスに対してシステムをロックすることができます。
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5-7.スマートフォンやタブレットからの照明制御に対応可能なシステムを、マルチバース送信機へ内蔵
スマートフォンやタブレットからの設定変更やトラブルシュートが可能なため、そのような作業に対し、知識を持ったプログラマーが常に必要になることもありません。マルチバースTransmitterモデルには、BluetoothとWi-Fi機能が備わっており、受信機への入力制御に対応いたします。City Theatrical社によるその他のマルチバース機材は、DMXcatを無料のスマートフォンアプリと使用することにより、無線システムの各種設定の変更やマルチバースシステム内に接続された灯体の制御が可能であり、マルチバースモジュールが灯体に組み込まれている機器や、マルチバースノードから信号を受け取る灯体、またはそれらのマルチバース受信機器からダウンストリーム側に、有線にて接続された灯体を制御することが可能になります。
LuminairをはじめとするWi-Fiを使用したタブレットアプリでの遠隔操作にも対応いたします。
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5-8.ロックPIN: 第三者からのアクセスを防ぐロック機能
マルチバースシステムの改良が進み、DMXcatからのRDM操作にも対応するようになる中で、それぞれの送信機へ第三者からの不用意なアクセスを防ぐために、ロックPIN機能(4つの数字によるコード)が内蔵されました。Wi-Fiを使用した制御機器によるマルチバース送信機の操作には、そのWi-Fiパスワードの利用が、同じ役割を果たすことになります。
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5-9.初代のCity Theatrical社のワイヤレスモデル、SHoW DMX Neo 無線DMX機器の機能への対処
すでに販売されているマルチバースSHoW Baby、マルチバースNodeと、マルチバース2.4GHz無線モジュールは、完全なる互換性を持ち、City Theatrical社によるSHoW DMX製品は、既存の製品に対してシステムの拡大を図ることも可能です。
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5-10.RDM機能の統合:マルチバースモジュールを灯体に組み込むことで、無線機能と灯体を一つの機器として統合することを可能にする技術
マルチバースモジュールを灯体へ組み込むことで、無線機能と灯体を一つの機器として統合することを可能にしました。これまでユーザーは追加で無線機器を仕込むことなく、シンプルに灯体と無線通信ができる製品を探していました。
特に大規模公演において、仕込みがシンプルになることは、それだけで大きなメリットとなります。
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5-11.リーズナブルな製品価格
今まで発売されてきたDMX/RDM機能をフルに使用できる機器と比較しても、マルチバースモジュールはお求めやすい価格の商品です。すべてのタイプの灯体に組み込むことが可能なマルチバースモジュールは、直接無線機能を統合するあたってパーフェクトな製品です。
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マルチバースは数百台の灯体、数十ものDMXユニバースへと、システムの拡大が可能な無線制御システムです。今後、多くの製造メーカーが灯体をはじめ、照明システム、照明卓、ゲートウェイ機器、フォグマシーン、調光機器にマルチバース無線モジュールを組み込むようになっていきます。
私たちの生活環境には既に多くの無線が飛び交っています。ノートパソコンを立ち上げれば簡単にWi-Fi無線に接続することができます。照明業界も近い将来同じことになるでしょう。灯体は無線、有線の両方に対応することが当たり前になり、現場の需要や使用環境、費用、仕込み時間に合わせて柔軟に照明システムのセットアップが変えられるようになると確信しております。
マルチバース製品は米国特許#7,432,803,B2, #10,129,964 B1をはじめその他特許権に保護されております。 設計・製造はアメリカ生産です。